大阪高裁で逆転勝訴!

大阪地裁での令和4年9月22日判決では請求棄却だった加山さん(仮名)夫婦の訴訟ですが、2024年1月26日、控訴審で逆転勝訴です!

加山まり子さんに対して1100万円、加山徹さんに対して220万円の賠償を命じる判決です。

【弁護団声明】
旧優生保護法訴訟判決に関する声明(大阪弁護団)(PDF)
優生保護法訴訟大阪高裁判決に対する弁護団声明(全国弁護団)(PDF)


(追記)

大阪高裁は、民法724条後段の規定の法的性質は除斥期間であり、本件における除斥期間の起算点は、優生手術が実施された日であるとした上で、例外的に、正義・公平の観点から、時効停止の規定の法意(民法158ないし180条)等に照らして除斥期間の適用が制限される場合があることは法解釈上想定されるとし、本件については、除斥期間の適用をそのまま認めることは、著しく正義・公平の理念に反するとしました。
具体的には,以下のように述べて、権利行使を客観的に不能又は著しく困難とする事由が解消(本件では、診断書が取得できたこと)されてから6か月を経過するまでに訴訟提起がされたものとして、除斥期間の適用を制限しました。

以下、除斥期間の適用を制限すべきとする理由について述べた部分を引用します。(※一部省略やまとめた部分があります。)

「そもそも旧優生保護法12条に基づく優生手術の規定自体、非人道的なものであって、被控訴人らが受けた人権侵害の程度は非常に大きいものである。一方で、…優生手術は、昭和24年から平成8年まで1万5000件以上実施されてきたにもかかわらず、旧優生保護法の優生思想等が問題視された平成8年改正の後も、平成30年1月の仙台訴訟まで、優生手術に係る国家賠償請求訴訟の提起は一切なかったこと、控訴人らも、控訴人1が不妊手術を受けたことは知っていたものの、…それが旧優生保護法に基づく優生手術であったことを知りうる状況になかったことが認められる。そして、このような事情の背景としては、控訴人らが有していた聴覚障害等のほか、優生手術の対象となった障害者に対する社会的な差別・偏見やこれを危惧する家族の意識・心理の下、控訴人らが訴訟提起の前提となる情報や相談機会へのアクセスが著しく困難な環境にあったことが大きな要因であったものとみるのが相当である。」
 (そのような状況を被控訴人らが意図的に作出したと認めることはできないが)「日本国憲法は、個人の尊重を基本理念として、特定の障害ないし疾患を有する者も人は平等に取り扱われることを明らかにしているものであり、被控訴人は、その趣旨を踏まえた施策を推進していくべき地位にあったにもかかわらず、…非人道的な優生手術を制度化して、優生思想に基づく優生政策を積極的に推進し、…広く優生思想及び優生政策の正当性を国民に認識させる状況を作出したことが認められる。
 そうすると,国家によるこのような立法及びこれに基づく施策が、広く国民に対し、旧優生保護法の規定の法的効果をも超えた社会的・心理的影響を与え、同法の優生手術の対象となった障害ないし疾患につき、かねてからあった差別・偏見を正当化・固定化した上、これを相当に助長してきたものとみるのが相当である。」
 (平成8年改正後も被控訴人が被害救済に消極的であったことも考慮すれば)「平成8年改正等を踏まえても、なおその後も被控訴人が正当化・固定化し、相当に助長した社会的差別・偏見による影響が大きく作用して、被控訴人らにおいて、優生手術に係る国家賠償訴訟を提起するための前提となる相談機会へのアクセスが著しく困難な状況が続いたものというべきである。」
 (控訴人らの権利行使を客観的に不能または著しく困難とする事由があるかは実態や法令に即して検討しなければならないが、優生手術を受けた者が訴訟をするには、民事訴訟法等に定められているとおり、①自らが不妊手術を受けたこと、②それが旧優生保護法に基づく優生手術にあたること、③旧優生保護法が憲法に違反していることを訴状に記載しなければならないだけでなく、証拠をもって立証しなければならない。しかしながら、優生保護審査会の審査、決定等に係る記録が消滅している場合には専門医の診断書等による立証が必要であり、このような)「専門医による診断を受ける機会が確保されるまでは、訴訟提起のための準備を整えることについて、客観的にみて著しく困難な状況が続いているといわざるを得ない。この困難さの程度は、不妊手術を受けた者が旧優生保護法に基づく優生手術であることを認識していなかった場合には、一層深刻であり、その診断を経ずに訴訟提起のための準備を整えることは、客観的にみて社会通念上不能と評価すべきである。」
「令和元年7月31日までは、…控訴人1が優生手術を受けたことの確認のための診断書の作成を相談・打診しても、40を超える病院等で断られ、また、控訴人ら代理人弁護士が、大阪府の旧優生保護法一時金受付・相談窓口の担当者に病院の紹介を求めても、…病院の紹介はしていないと回答がされ、一時金法所定の診断書作成のための医療機関が見つけられない状況にあったものと認められる。そうすると、…控訴人らは、…損害賠償を求める民事訴訟を提起することは、客観的に不能又は著しく困難な状況にあったということができる。」

 

1月 26, 2024