衆院厚労委員会後の合同記者会見報告

平成31年4月10日,衆議院厚生労働委員会において「旧優生保護法に基づく優生手術等を受けた者に対する一時金の支給等に関する法律案」が審理され,全会一致で採択されました。

これを受け,同日17時から,衆議院第1議員会館において,弁護団(新里弁護士)・被害者の会(北三郎さん)・謝罪を求める会(山本勝美さん)で合同記者会見を行いました。


以下,概要メモ。

【全国優生保護法被害弁護団 共同代表 新里宏二弁護士より】

足りないことは多々あるが提訴をきっかけに法律に結びついたことは一定の評価ができる。法制定後も内閣がどのようにこの法律を運用するかが問題。我々は判決を踏まえた法律を作って欲しいと訴えてきた。法律ができても判決後はその修正が必要になる。弁護団としては被害者の被害回復に向け戦いを続けていく。



【優生手術被害者・家族の会 共同代表 北三郎さんより】

耳を澄まして本日のやり取り(注:衆議院厚生労働委員会のこと )を聞いていました。法案ができても私の心の傷と身体の傷はきえません。私たちに向き合ってください。向き合わずに勝手に決めないでください。私たちの納得できる法律を作ってください。身体の傷は消えなくても心の傷はいくらかでも癒えるかもしれません。



【優生手術に対する謝罪を求める会 山本勝美さんより】

※添付の法律案への意見参照


*** 質疑応答 ***

Q.本日採決後にどのようなやりとりがあったのか(肩を叩いていたように見えたが)

→新里:不十分な点はあるが被害者の声が成果になったことについて,ここまでの評価とこれからという両方の意味で肩を叩いたんだと思う。

Q.北さんはどのように声を返したか。

→新里:これといった返事はなかったんじゃないかな。

→北:法律のことはよくわかりません。でも自分が国にやられた。幸せを無塵にして60年間過ごしてきた。国がやった。親父でも施設でもない。よしがんばるぞ,と思いがんばってきた。

Q.国会審議で当事者の声を聞かずに採決をしたが。

→新里:委員長提案の形も想定していたが,次の機会にでも被害者の声を聞く機会を設けて欲しい。

Q.来週参議院の厚労委員会でもその機会を求めているか。

→新里:被害者の声を聞いてほしいというスタンスは変わらない。

Q.国会決議があるとすればどのような内容を求めるのか。

→新里:4月の段階で国会決議があるのか。5月28日の仙台地裁判決後にどういう判決をするのか。6月25日までの会期末までに検討することかと思う。その際は,厚労大臣だけではなく,内閣として被害に向き合うかの決断を迫られるのではないか。あきらめずに,裁判で闘いながら,求めていきたい。

Q.次は内閣だということはどういう意味?

→新里:いい判決が出たときに,控訴するのか,内閣が向き合って控訴をしないのか。ハンセンのときには小泉首相が控訴を断念し,救済法ができた経緯がある。判決後には内閣がこの裁判を続けて被害に対して突き放すのかが問われていると思う。

Q.制度改正のために全力を尽くしていきたいとは具体的にどのようなことを?

→新里:裁判を戦い抜くこと。控訴断念になるかわからないが,制度が1本になるのか2本になるのか見えない部分もある。1つの制度が望ましいと思う。5月28日に勝たないと意味がないが。本日の評価している点は,被害者の声が枠組みを動かしたと言うこと。不十分な点を変えられるのは裁判と考えている。

Q.(北さんに)奥さんに何か報告するとしたら?

→北:法案が決まっていないので…。決まったら,女房や父親にも報告したいと思う。

Q.報告というのは?

→北:納得いくような法案であれば,報告しに行きたい。

Q.納得いかない法案の場合は?

→北:まだ分からない

Q.前回の会見に比べると大分トーンが柔らかいのでは.

→新里:裁判をしている立場からすれば勝訴するものと考えている。一方国会議員は勝訴は奇跡的と考えている。裁判に負けると制度ができないのでは,だから判決前に作るべき,という意見もあった。被害者の声が社会を変える力だと思ってきたが,それが形になったと評価できる部分もある。主戦場はまだ裁判にあると考えればいい。少なくとも最低保障的なものができた,それをよりよい制度に変えていくべきと考えれば,とも考えるようになった。

Q.法律ができた後も裁判を続けるつもりか?

→新里:各地に確認しているわけではないが,それぞれの原告が,それぞれの立場で,闘いたいと考えている。

→北:弁護士と一緒に乗り越えていきたいと考えている。



【全国「精神病」者集団 桐原さんより】

この場を借りて,ひとこと申し上げたいと思い,機会をいただいた。一歩前進・課題ありとなると,参議院であっという間に通過してしまうので,課題ありというところを参議院で議論してもらいたい。自分たちにとっての課題は,法改正後の被害者かたがたさん。保障の対象外となってしまった。本人に知らせたが,大変残念そうであった。法案の課題として記事にも触れてほしい。



Q.厚労大臣が訴訟を理由に違憲性について何も触れなかったが。

→北:今のところわからない。耳をすまして聞いていた。高齢なのでできるだけ早く決めてもらいたいという思いもある。できたら納得いくような法案を作ってほしい。

Q.弁護団声明において被害者の声を聞いてほしいとあるが,どのような形で求めるのか?

→新里:弁護団声明は既に送付済み。通常は参考人か。

Q.委員長の法案の趣旨説明の際に,「我々」については国会や政府を特に念頭に置くという話があったが,その点の評価は?

→新里:半歩前進。私たちの思いからすれば,違法行為をした国がきちっと謝罪してほしい。そこまではいっていない。

→北:国の責任は我々?それに国会も衆議院も厚生省も入っている?責任逃れのような国の言い方ではないかと思う。国が私たちの身体を傷つけて法案をこのままでは引き下がれない。国の方が責任を持って謝罪してもらいたい。そればかり思っている。できたら,法案が可決しても,国はまだ謝ってもらえないのかな,と思う。できたら謝罪を国にしてほしい。

Q.法案では『我々』としかないが。

→新里:批判が強かったので取り入れざるを得なかったのかなと思うが,不十分。ただしハンセンも「我々が」。ハードルが高いことは分かっているが被害者の願いであることを肝に銘じて活動していきたい。



【最後に新里先生から】

最終的に被害者が納得できる仕組みを求めて努力していく。5月28日の判決を受けて,控訴をするかどうかの判断で逃げられなくなったときに本当に内閣としてどう向き合うか。マスコミの力にも感謝。引き続きよろしくお願いします。


【番外編】

北さんも委員会を傍聴したのですが,その際のセキュリティチェックがすごく厳しかったことが印象的だったようで,会見前に興奮気味でお話ししてくれました。

皆さん,お疲れ様でした!まだまだこれからも頑張らねば!

4月 11, 2019