福岡で聴覚障害の夫婦が提訴

本日10時,福岡で,旧優生保護法下で強制不妊手術を受けさせられたとして,国に対して2000万円の賠償を求め,提訴をしました。原告は朝倉彰さん(夫・80代)と朝倉典子さん(妻・70代)ご夫婦で,いずれも仮名です。ご夫婦とも聴覚障害があり,夫が30代の時(1960年代後半(昭和40年代前半)),結婚直前に何の説明もなく手術を受けさせられました。

この手術については都道府県優生保護審査会に付された形跡がなく,「医師の認定により本人の同意を得て」行う手術であったと推測されますが,夫は明示の同意をしてはいません。意味を理解しないまま同意書に署名させられたなど,形式的には本人の同意があったことにして手術が行われたと思われます。妻は不妊手術を受けてはいませんが,結婚後に夫の不妊手術を知りショックを受け体調を崩し,その後も,子供を持つ機会を奪われたことで辛い思いをしてきました。

以下に,訴状の一部を引用します。

 優生保護法に関する政策は、子どもを持つか否かという自己決定権の侵害にとどまらず、いままさに生きている障害者等に対して、国家が「本来生まれて来るべきではなかった劣等な生」という烙印を押し、その存在そのものを否定する政策であった。
 そして、この政策の結果、社会内に、障害者等を軽んじ、差別されても仕方のない存在であるという風潮が作出され、元々社会内にあった障害者等に対する偏見差別を助長した。
 原告らを含む全ての障害者等は、そのような社会で生き続ける中で、障害があることを理由に人生の様々な場面で偏見差別にさらされる地位に置かれるという被害を受け続けてきた。
 また、社会にある偏見差別の意識は障害者等本人の意識にも内在化し、自分自身が障害者等であることに劣等感をいだき、人生の様々な選択の場面で自分らしい人生を歩むことを諦めてしまった者も数多い。
 優生保護法が改正され、旧優生保護法一時金支給法が制定された現在においても、優生保護法に関する政策によって作出された障害者等を軽んじる社会の風潮は現在も払拭されておらず、原告らは現在も偏見差別にさらされる地位に置かれたまま、被害は継続している。

福岡訴状より
12月 24, 2019