11月28日仙台期日のご報告

11月28日16時~17時、仙台地方裁判所で第4回口頭弁論期日がありました。

 

【本日の期日までの書面でのやりとり】

原告側から、「準備書面3」「訴え変更申立書」「青井先生(学者)の意見書」「証人予定者の陳述書」を提出しました。

その後、国側から、「第5準備書面」と「求釈明申立書」が提出されました。

また、次回の証人申請(原告飯塚さん(仮名)と原告佐藤さん(仮名)のお姉さん)について異議がないという「意見書」が提出されました。

原告側からは、「求釈明に対する回答書」が提出されました。

 

求釈明については、主張について不明な点がある場合に、相手に対して質問をするものです。今回、国からは原告の主張について憲法や判例の考え方について疑問があるとして質問があったものですが、内容は難しいので省略します。

 

原告側は、このような求釈明の申立ては訴訟の遅延を目的とするものであるとして、これまでの原告の主張に速やかに反論するよう強く要望するという書面を提出したものです。

 

【本日の期日でのやりとり】

本日の期日では、まず原告代理人の太田弁護士から意見陳述を行いました。

この意見陳述では、準備書面3の内容を、ルビ付きパワーポイントで説明しました。

・憲法17条にもとづき(国家賠償法ではなく)特別な損害賠償のための法律を作る必要があったこと

・このような法律を作らなかったことが憲法17条違反であること

・国は「20年がたつと損害賠償ができない」として除斥期間を主張しているが、除斥期間を考えると、ほとんどの方が、国家賠償法では賠償を求められないため、特別な損害賠償の法律を作るべきであったこと

・どのような法律を作るべきであったか。それは、20年がたっても請求できる法律。交通事故などの賠償を上回るものであること。資料がなかったり自分では訴えることが難しい人にとっても被害回復が図られること

・国会は、きちんとした理由がないのに、長い間法律を作ってこなかったこと。厚生労働大臣が国の責任があると国会で認めた日からも13年たっていること

・遅くとも厚生労働大臣の答弁から3年たった平成19年には国が法律を作るべきであったこと

これらを分かりやすい言葉で意見陳述されました。

 

その後、事前に提出された書面の陳述、証拠調べという手続が行われました。

この中で、「求釈明に対する回答書」に関連して、新里弁護団長から、書面の提出が遅すぎる、引き延ばしをしているのではないかと思えるほど不誠実である、我々は早期の解決を目指しているという話がありました。

 

以下、裁判長、原告代理人、被告代理人のやりとりです。(長文かつ難解なので、最後の次回期日だけ見てくれてもよいです!)

 

裁判長:国からの求釈明事項を踏まえ、原告の主張について、以下の点を確認したい。

・憲法17条に基づき損害賠償請求権を具体化する法律として国賠法が設けられている。国賠法の中には民法が適用されるとあり、民法の除斥期間も適用されることになる。リプロダクティブライツを侵害されたものについても等しく損害賠償請求権を行使し得なくなる。リプロダクティブライツを侵害されたものについても適用されるという立法そのものを違憲という趣旨も含まれていると原告は主張されていると解釈している。

・その前提で、リプロダクティブライツを侵害されたものが、損害賠償請求権が発生する。国賠法上規定されている民法の除斥期間を適用される場合、その部分が違憲だと考えた場合、もともとの損害賠償が適用されることに止まらず、さらに、立証責任を緩和したような補償立法を制定すべきであるという構成を取られているのではないかと読ませていただいたが、いかがか。

 

原告代理人新里弁護士(団長):まさにご指摘のとおりであり、証拠が散逸している中でどのように救済していくかを考えると通常の損害賠償請求権では対応できないと思い主張している。

 

裁判長:憲法17条が根拠と考えているのか。

 

新里:17条に力点を置いている。

 

裁判長:上記を前提とすれば、平成14年の最高裁判決の射程が生きてくると思うが、侵害される法的利益は何か、侵害の程度に関する事情があらためて争点となるという理解でよいか。

 

新里:そのとおりである。

 

被告代理人:前提として確認であるが、原告の主張は補償立法をしないことについての立法不作為としか主張は解釈できない。仮に国賠法の規定についての違憲を述べるのであれば、あらためて書面で提出いただきたい。

 

裁判長:書面で出していただくことは可能か。

 

新里:検討する。

 

裁判長:被告側は、除斥期間の主張について、平成17年判決の枠組みの中で主張を補充されたという理解でよろしいか。

 

被告代理人:優生手術自体に対する損害賠償に対する反論をしたものである。立法不作為に関する反論とは別である。

 

裁判長:原告の請求としては個々の不法行為に対する損害賠償ではなく、立法不作為に対する違法性を主張しているのでは。

 

新里:手術自体の違法性を主張したことに対する反論として理解しているが、除斥期間を主張することは国賠法で対応できたという国の主張と矛盾するのでは。

 

被告代理人:理解の違いだと思うので、あらためて書面で反論する。

 

新里:理解の違いではないと思う。とにかく早く書面を出してください。

 

裁判長:除斥期間についてはどのように考えているか。

 

新里:反論については検討するが、除斥期間に当たるという主張をもって、立法不作為の根拠事実になると理解をしている。

 

裁判長:被告側はいつまでに反論が可能か。

 

被告代理人:今の法廷での原告の主張と、書面上の主張がずれていると思う。この点について主張を整理して欲しい。それを踏まえた上で反論をして欲しい。

 

新里:かんべんしてください。期日前に主張をしてくださいと言われていたはず。

 

原告代理人鈴木弁護士:どの点がどのように食い違うのか。

 

被告代理人:郵便法大法廷判決(平成14年判決)に対する何らかの反論を出すことを予定していたが、不明な点があったため求釈明申立てを行った。今回の裁判でのやり取りで書面上の主張と法廷での主張が食い違うと認識した。そのため主張をあらためて整理して欲しい。

 

裁判長:いずれにせよ法的利益が争点になると思うが、被告側で、旧優生保護法により、子どもを生み育てる権利が侵害されたかどうかについてしっかり主張いただくということで良いか。

 

被告代理人:国賠法が準用している民法によって制限されていることが違法であると裁判所は整理をしているが、そうなのか、立法不作為なのか、両方なのか、明らかにして欲しい。

 

新里:裁判長が明らかにして欲しいと述べている点について明らかにしてください。

 

原告代理人伊東弁護士:国賠請求権についての主張は整理されている。除斥期間について主張するか(適用違憲である旨の再抗弁をするか)については原告側で次回までに検討する。

 

裁判長:そうなるとまさしく平成14年判決の射程範囲の話になる。そうなれば、リプロダクティブライツが憲法上認められるか、また、旧優生保護法における行為が正当行為として違法性阻却の対象となるかという整理となる。後者は被告の反論によるところだと思うが。

 

被告代理人:本日の法廷での主張は原告側の主張ではないという理解で良いか。

 

伊東:立法不作為の主張は、一旦発生した国賠請求権が除斥期間経過したことにより権利救済されないことを前提に、憲法17条に基づき補償立法義務があるとしている主張である。その違憲審査基準に郵便法違憲判決の基準を借用したものである。

これとは別に、手術自体が憲法13条違反であることを前提に損害賠償も請求しているが、別の訴訟物である。これについて今回国から除斥期間経過の抗弁が出ている。これに対し、本件に除斥期間を適用することが憲法17条に違反するとの主張をするかどうかは、これから検討する予定である。

しかし、この適用違憲の主張は、立法不作為構成において前提とする除斥期間消滅と矛盾する主張となるので、予備的な主張となる。

 

裁判長:(ふむふむ。)書面はいつまでに対応いただけるか。

 

新里:当方の書面は12月21日までに提出する。

 

被告代理人:原告からいただいた書面を踏まえ、1月末には書面を提出する。

 

裁判長:2月8日の尋問について、人証については被告側も異議がないとのことなので、採用する。佐藤さんのお姉さんについては主尋問60分、反対尋問20分。飯塚さんについては主尋問60分、反対尋問20分。

 

新里:損害に関連して、12月28日までに、原告側の陳述書を提出する。

 

被告代理人:内容を拝見して対応する。

 

↑ 以上がやり取りです。難しいですね。難しい。

 

以上を踏まえて、次回期日は、2月8日(金)13時30分(仙台地裁101号室)に行われることになりました。次回期日は尋問期日(当事者の方の法廷での証言)になります。

12月 4, 2018