優生保護法の立法経緯
国会会議録検索システム(http://kokkai.ndl.go.jp/)を利用し,会議録から立法経緯をまとめました。
昭和22年(第1回国会)
10月6日 優生保護法案(福田昌子外2名提出)が提出(会議事録第21号)
11月10日 衆議院の予算委員会(会議録第19号)
○加藤(シ)議員より発言要旨
「乳幼児の死亡率を下げること及び母性の保護の見地、から対策が必要。近く厚生委員会の方に優生保護法案を提出する。その際には来年度予算を十分に取って欲しい。」
12月1日 衆議院の厚生委員会(会議録35号)
⇒優生保護法案が付議
○加藤シヅエ議員より提案理由の説明
「母体の生命健康を保護し、かつ不良な子孫の出生を防ぎ、もって文化国家建設に寄与することを目的とする。」という目的に法案の全てが凝縮されている。日本の将来の人口問題(過剰)の見地からみると同法案も問題に対する備えとなり得る。しかし、主眼ではない。人口問題との結びつきよりは、母体の生命保護、母体の健康増進、生まれてくる幼児の優良なるべきものを求めるという点が主眼にある。そこに着目して審議して欲しい。」
12月3日 衆議院の厚生委員会(会議録第36号)
⇒優生保護法案が議題に付されるも質疑無く次回に延長
昭和23年(第2回国会)
2月3日 第2回国会の衆議院本会議(会議録第13号)
○山崎道子君
「1日も早く優生保護法を制定して諸種の不幸な実情にある産児調整をすべき。」
6月15日 衆議院の予算委員会(会議録第33号)
○芦田国務(総理)大臣の発言要旨
「専門家の意見によれば我が国の人口増加はあまり遠くない時期に停止する。場合によっては人口は次第に減少する時期に入るであろうということが有力な見解。法律を持って産児制限をおこなうことは考えていない。」
○加藤シズエ君の発言要旨
「総理大臣の産児制限に無関心な発言は残念。優生法が近く参議院と衆議院に上程される。優生法を含めた産児制限という意味が多分に盛られた法案で、賛成の委員が超党派でいる。」
6月15日 優生保護法案が提出(太田典豊外5名提出)され参議院に送付(衆議院の厚生委員会の会議録第10号)
6月19日 参議院の厚生委員会(会議録第13号)
⇒優生保護法案が審議入り
○谷口彌三郎君より提案理由の説明
「総司令部の調査によると人口は8000万人が限度。現在は7800万人で、120万人の自然増と70万人の帰還者を足すと既に超えている。その対策は、移民、食料の開拓、産児制限。先天性の遺伝病者の出生を抑制することで人口増加を防ぎ、逆淘汰を防ぐために優生保護法案を提出。」
6月19日 優生保護法制定反対の陳情書が提出される(衆議院の厚生委員会の議録13号)
6月22日 参議院の厚生委員会(会議録第14号)
⇒審議後に全会一致で原案通りに可決
○委員からの質疑に対して谷口彌三郎君より答弁(要旨)
「社団法人たる医師会の指定する医師」(12条)について、医師会が統括官下の医師の技術等を熟知しているので医師会の指定とすることが望ましい。」など
6月23日 第2回国会の参議院本会議(会議録52号)
⇒優生保護法案及び予防接種法案が一括して上程され、全会一致で可決。
○谷口彌三郎君より審議の経過と結果が報告。
「ある程度の人工妊娠中絶を認めて、それによって自然増加を抑制したいというのがこの法案提出の大要。6月19日以来3回にわたり厚生委員会で質疑応答。質疑応答の内容を2,3紹介する。」
6月23日 衆議院の厚生委員会に優生保護法案が付託(会議録第14号)
6月24日 衆議院の厚生委員会(会議録第14号)
⇒優生保護法案が審議入り。
○福田昌子君より優生保護法案の提案理由を説明(要旨)
「もって人口の自然増加を抑制するために本法案を提案。本法案の大要を説明。」
6月27日 衆議院の厚生委員会(会議録第17号)
⇒優生保護法案が審議入り。
○谷口彌太朗君(参議院議員)より提案理由を説明(要旨)
「戦争中は母性を犠牲にして出生増加を第一の主眼点に置いたが、新憲法の下で母性の健康を保護することが必要であるから、法案を提出」
6月28日 衆議院の厚生委員会(会議録18号)
⇒優生保護法案が付議。質疑応答後に起立総員で可決
○谷口彌三郎君の発言要旨
「両親ともに健康の場合の人工妊娠中絶は想定外。この法案後に各地に優生結婚相談所を設置する。相談所の指導を通じて受胎調整を行う。」
6月28日 第2回国会の衆議院本会議(会議録72号)
⇒優生保護法を含む9法案が一括して委員長報告の通りに可決
○山崎岩男(厚生委員会の委員長)の発言要旨
「母性の生命、健康保護の見地から、優生手術の対象範囲を拡張すると共に、ある程度の人工妊娠中絶を認めんとするのが本法案の提出理由」
○異議無く可決
11月15日 第3回国会の参議院本会議(会議録11号)
○民主党の谷口弥三郎君が発言要旨
「我が国の人口の状況は飽和状態。人口抑制策が必要。第2回国会優生保護法が成立したが、うまくいっても1年に5万人程度の出産抑制のみ。助産婦の指導等を通じて、今後さらなる不良な分子の受胎調整政策が必要。」